- A note on generalized Thurston-Bennequin inequalities (with Nobuo Iida and Masaki Taniguchi), Internat. J. Math. 33 (2022), no. 14, Paper No. 2250089, 8 pp. [arXiv:2207.00229]
飯田君の不変量のadjunction型不等式への応用.(少し評価を損するが)自己交叉が負の曲面のadjunction不等式の最短証明ではなかろうか.すぐできた.
- Dehn twists and the Nielsen realization problem for spin 4-manifolds, to appear in Algebr. Geom. Topol.
[arXiv:2203.11631]
かなり広汎なスピン4次元多様体に対してNielsen実現問題を否定的に解いた.(これまで知られていた(単連結な)例は論文9でやっていたK3曲面だけだった.)加藤佑矢君の仕事が4次元のDehn twistに使えることに気づくことが(というよりそれだけが)必要だった.すぐにできた.
- Positive scalar curvature and homology cobordism invariants (with Masaki Taniguchi), to appear in J. Topol.
[arXiv:2104.10860]
論文5の続き,というか極限まで行った先がこれ.論文5より遙かに強力な結果が得られた.この方面でSeiberg-Witten理論ができることとしては,期待し得る中のbest possibleだと思う.論文5の元となった某氏の仕事がこれまでいまいちよく分かった気がしなかったが,やっと透明な理解に達した.
- A note on exotic families of 4-manifolds (with Tsuyoshi Kato and Nobuhiro Nakamura), Proc. Amer. Math. Soc. 151 (2023), no. 6, 2695-2705.
[arXiv:2101.00367]
紆余曲折あって大変短い論文を書くことになった.これ以上短いものを書くことはなさそうな気がしていたが,v2でもう少し普通の長さになった.
- The groups of diffeomorphisms and homeomorphisms of 4-manifolds with boundary (with Masaki Taniguchi), Adv. Math. 409 (2022), Paper No. 108627, 58 pp.
[arXiv:2010.00340]
境界付き4次元多様体の族に対する制約を与えた.境界付き4次元多様体のDiffとHomeoの比較に強力な応用がある.ゲージ理論のこの方向への応用としては最初のもの.2020年5月に谷口君から,これまでの閉4次元多様体に対する族のゲージ理論の結果は境界付きでできないのかと聞かれ,以前からできそうな気がしていたものを一緒に実行してみた.ManolescuのSW Floer安定ホモトピー型に体を慣らすための訓練論文という側面も大きい.
- Constraints on families of smooth 4-manifolds from $\mathrm{Pin}^{-}(2)$-monopole (with Nobuhiro Nakamura), Algebr. Geom. Topol. 23 (2023), no. 1, 419-438.
[arXiv:2003.12517]
4次元多様体の同相群と微分同相群のホモトピカルな比較に関する当時最も広汎な結果.局所系にまつわる話を関西ゲージ理論セミナーで何時間も聞いていたとき,講演と直接は関係ないFrøyshovと中村さんの局所系係数の交叉形式に関する結果を思い出した.その瞬間,中村さんの$\mathrm{Pin}^{-}(2)$-モノポールに某氏の議論を当てはめると,その議論の適用範囲をかなり広げられるのではないか,という考えが降ってきた.講演後の懇親会の会場への移動中に中村さんに質問してみると,あ,それはできますね!と即答だった.後は中村さんの$\mathrm{Pin}^{-}(2)$-モノポールに関する蓄積のおかげで何の苦もなく進んだ.
- A note on the Nielsen realization problem for K3 surfaces (with David Baraglia), to appear in Proc. Amer. Math. Soc.
[arXiv:1908.03970]
4次元におけるNielsen実現問題(写像類群の任意の有限部分群は微分同相群に持ち上がるか,という問題)に,K3曲面が反例を与えることを示した.また,π1(Diff(K3))からπ1(Homeo(K3))への自然な写像は全射ではないことを示した.特に,π1(Homeo(K3))は非自明なことが分かる.この論文の1カ月ほど前にarXivに出たGiansiracusa-Kupers-Tshishikuの結果を受けて議論した.必要なゲージ理論は論文7で既にできていたため,この論文自身はこれまでに書いた中では断トツで短い.
- Rigidity of the mod 2 families Seiberg-Witten invariants and topology of families of spin 4-manifolds (with Tsuyoshi Kato and Nobuhiro Nakamura), Compos. Math. 157 (2021), no. 4, 770–808.
[arXiv:1906.02943]
族のSeiberg-Witten不変量に対するある種の剛性定理を示した.応用は新しく面白いもので,「滑らかになれない位相的4次元ファイバー束」を与えるというものである.しかもそのファイバー・底空間・全空間は滑らかな多様体の構造を持つことが分かる.(全空間を滑らかにするのにはKirby-Siebenmann理論を使う.)さらに,「滑らかになれない位相的ファイバー束」の存在の帰結として,微分同相群と同相群が弱ホモトピー同値にならないような4次元多様体の例を数多く与えることができる.この論文後しばらくは,そういった方向の研究がかなりはかどった.古典的な高次元微分トポロジーを共著者に沢山教えてもらえたのも楽しかった.
- On the Bauer-Furuta and Seiberg-Witten invariants of families of 4-manifolds (with David Baraglia), J. Topol. 15 (2022), no. 2, 505–586. [arXiv:1903.01649]
族のBauer-Furuta不変量と族のSeiberg-Witten不変量の間の関係を調べた.その議論の副産物として,「K3曲面の滑らかになれない族」の新しい例を構成し,その結果K3曲面の微分同相群と同相群の間のあるホモトピカルな差を見いだした.証明は,Seiberg-Witten方程式の族の有限次元近似とSteenrod平方作用素の組合わせ.ゲージ理論の研究においてSteenrod平方作用素が有効に用いられたのは,これが初めてだと思われる.共同研究者の猛烈な計算と,論文8を書く際に培った幾何学的議論が上手く合わさった.論文8の議論が使えることに気付いたのはこの論文をarXivにupした後だったので,論文8を引用しつつv2に結果を加えた.とても長くなった.
- A gluing formula for families Seiberg-Witten invariants (with David Baraglia), Geom. Topol. 24 (2020), no. 3, 1381–1456.
[arXiv:1812.11691]
Rubermanや自分が使っていた族のSeiberg-Witten不変量に対する貼り合わせ公式を,より一般的な状況で証明した.この後の論文の重要な例の計算で何回も使った.folklore的なものをキチンと一般的な定理として定式化してみると,何となく必要な気がしていた仮定がいらないことに気づくものだ.
- Positive scalar curvature and 10/8-type inequalities on 4-manifolds with periodic ends (with Masaki Taniguchi), Invent. Math. 222 (2020), no. 3, 833–880.
[arXiv:1809.00528]
正スカラー曲率計量と10/8不等式という,元来全く異なる背景の話題が結びつく,という論文.単に関係が付くだけではなく,正スカラー曲率計量の存在問題に強力な応用がある.主要な道具は周期的な端を持つ4次元多様体上のSeiberg-Witten方程式.弟弟子の
谷口正樹くんと夕飯後に院生室で雑談をしていたら,あっという間に証明されるべき結論が何なのか判明した.技術的な山場である倉西モデルと同変摂動の議論の両立は,谷口くんとドイツのレーゲンスブルグに出張に行った際に連日議論して完成.朝から始まる集会に参加しつつ深夜までその辺の広場で議論するという生活を二週間送る.谷口くんは黒い企業で働いている気分だと言っていた.
- Characteristic classes via 4-dimensional gauge theory, Geom. Topol. 25 (2021), no. 2, 711–773.
[arXiv:1803.09833]
博士論文.族に対するゲージ理論を用いて,4次元多様体束の特性類を構成した.2015年のトポロジーシンポジウムにおいて森田茂之先生が提起された,
「Euler類を真に超える特性類は存在するだろうか?」という問いに対する自分なりの解答.MMM類に代表されるような従来の特性類の構成におけるEuler類の役割をゲージ理論の偏微分方程式に担わせる,つまり無限次元化するというのがアイデア.
- Positive scalar curvature and higher-dimensional families of Seiberg-Witten equations,
J. Topol. 12 (2019), no. 4, 1246–1265.
[arXiv:1707.08974]
正スカラー曲率計量のなす空間のトポロジーを調べた.Rubermanによる,4次元におけるこの方面の最初の結果の一般化になっている.可換な微分同相の組に対してSeiberg-Witten的な不変量を導入し,その非自明性を示すことが証明の中心になる.Rubermanの論文はもちろんだが,兄弟子の中村信裕さんの仕事を勉強していたのが役に立った.中村さんとはこの問題に関して随分長いこと議論をさせていただいた.
- A cohomological Seiberg-Witten invariant emerging from the adjunction inequality,
J. Topol. 15 (2022), no. 1, 108–167.
[arXiv:1704.05859]
論文1で仄見えていた,Seiberg-Witten方程式の高次元の族とadjunction不等式を破る曲面たちの配位との関係をシステマティックに調べた.元々のアイデアは幾何学的で明快だがそれを実現するのは大変.主要部を考えているときにインフルエンザに罹り,高熱で技術的詳細を忘れないかハラハラした記憶がある.2番目に書いた論文だがアクセプトされるまで大分かかった.今思うともう少し上手く書けそうな気がする.
- Bounds on genus and configurations of embedded surfaces in 4-manifolds,
J. Topol. 9 (2016), no. 4, 1130–1152.
[arXiv:1507.00139]
修士論文.Seiberg-Witten方程式の高次元の族に対してwall-crossingが発生するための十分条件を,4次元多様体に埋め込まれた曲面たちの言葉で記述した.応用として,4次元多様体内の曲面配位に対して制約を与えることができる.きっかけはM1のとき読んでいたKronheimer-MrowkaのThom予想の論文.初めて真面目に読んだ論文だった.M1の2月ごろに最初にできたと思ったことは,既に出ていた諸結果と被っていることが判明.(その内のひとつはたった一月程前にarXivに出ていたのだが,M1当時arXivをチェックする習慣が自分に無かったため気づかなかったのだ.)それらから抜け出すために上に書いたような方向に進むことになり,結果的にこれが族のゲージ理論を考えるきっかけになった.